与太話にもほどがある オフお知らせと語りと小咄。 忍者ブログ
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三月春コミ、スペース決定です。T27aにいます、春はハルヒ参加ですー。
サークルカット間違ってアップした気がしてなりません。うわあどっちの使ったっけ…!
二月のオンリーに行けなかった分狩人になろうと思います新規開拓ジャンルも行かねば…。


……新規開拓、ええ、うっかりはまってしまいました。はまったというか一つのカプは数年ぶりに帰ってきたと言いますか。
いやあちょっとばかりぽけもんとポケスペとアニポケに。
ゲームはやったことがなかったしきっと合わないタイプのゲームなのでやるまいと思っていたのですがついついHGSSを買ってしまいましたとも…。あまり進んでいないのはご愛敬。早くルギアを迎えに行きたいです。
ポケスペに至ってはある日思い立って29巻ほど揃えたレベル。ダイパ編は区切りがついてからにしようと思って我慢してます。
アニメはかなり昔に好きだった覚えがありまして…伝説の回とか見た覚えはあるのにそこまで真剣に見ていなかったのか台詞とか細かいところを覚えてないのでレンタルしようかと思いました。ビデオのレンタル軒並み無くなってたので、早くDVD化してくれるといいと思います。
緑赤(ゲーム)とグリレ(スペ)とシゲサト(アニメ)というなんとなくわかりやすい感じで好きです。それぞれライバルと主人公なのに、かなり関係性とかキャラ付けが違うところがツボ。クロスオーバーでみんなできゃっきゃしてると大変よろしいと思います。正確にはきゃっきゃしてる主人公三人を愛でるライバル三人が素敵だと思います。
ただ全員同時に出そうとすると…名前…っ! うーゲームが初代だし優先したい気もしますがスペはもう名前になっちゃってるしむー。ゲームの方の表記を「緑・赤」にして「グリーン・レッド」と読ませるのを拝見した時はなるほどと思いました。
この三組は一番大きい母体が同じなのでなんとなく比較萌えな感があります。
スペだけ幼馴染みじゃないとか、バトルだとゲームはグリーンが負けっぱなしでスペは五分五分で、アニメはサトシが滅多に勝てないとか。
ちょっと考えてみた・それぞれに二人の関係を聞いた時。
初代・ゲームグリーン「幼馴染み、ライバル、で、まあ恋人」
スペグリーン「ライバル、親友、……恋人」
シゲル「恋人。大切な幼馴染みで、貴重なライバル」
初代・ゲームレッド「幼馴染みで、ライバルで、恋人だって言えって」
スペレッド「ライバル! んで一番の親友で、え、あー、恋人?」
サトシ「やっぱ一番のライバルだよな! 嫌味な幼馴染みで、うー…、好きな奴!」
シゲルに突っ込むべきか他の連中に突っ込むべきかわからない。緑赤はもの凄く幼馴染みイメージが強いです。スペは公式のキャラ紹介で親友って言われてるからな!
脳内では世話焼きお節介アホデレ×無頓着面倒くさがりわかりにくい素直、クール熱血理解者イケメン×明朗快活元気な鈍感、べた惚れ相手にだけ甘い策士×単純明快猪突猛進仲間思い、で萌えてます。わかりにくいな!
最近は木曜日がアニメパラダイスです。銀魂見てぽけもん見て薔薇色タイムです。

で、先日2/27が初代ゲーム発売日ということで。14周年ですって。
ウェブアンソロに悶えつつ発作的に書いてしまいました。
初代だけ書いてたはずが、いつの間にかスペも追加されてそうなったらとアニメが加算されました。
緑→赤→レッド→グリーン→サトシ→シゲル。CPは上の三組です。全員同軸にはいません。ゲームはHGSSというか金銀ネタバレ有り。勢い重視。
ついでにはまった当初にぽちぽちしたシゲサト小ネタと短編が下の方に。

軽い買い出しをすませたジムからの帰り道、ばらばらとトキワの森の木々から音がする。いつの間にか空は曇りきっていて、大粒の雨が葉っぱを叩いているのだった。虫取り小僧たちも流石に慌てて逃げ出すだろう。
気まぐれで空を飛んで帰らなかったのが仇になった。今からピジョットを飛ばせるのは酷だし、リザードンなど以ての外だ。
まあたまにはいいか、とグリーンは楽観する。今更少々の雨に打たれたところで風邪を引くような柔な体はしていないし、大粒ではあるが土砂降りではない。霧雨の方が体を広範囲に渡って濡らす分厄介だ。
周りの葉が奏でるのは歓喜の歌かどうなのか、春が近づいているとはいえ雲のせいで気温は下がっている。植物の気持ちまではグリーンにはわからない。
あいつはどうしているかな、と急ぎ足になりながら考える。赤い帽子がトレードマークの、一人山頂にい続ける幼なじみを思う。正確にはそれに付随してライバルだとか、明文化するには気恥ずかしい諸々の属性がついてくるのだが、この際置いておこう。
気象だの気候だのイベントだの、町の端々に転がっている思い出だのに触れてはいちいち相手のことに思いを馳せる自分はいい加減末期だとわかってはいるが、仕方がない。目下のところ奴こそがグリーンの頭を支配しているのであり、その座は十数年来変わった試しがない。その次あたりに容量が大きいのはきっとポケモンである。相手はもしかしたらその比率が逆転しているかもしれないが、そんなことは悲しいので考えないようにしている。
いい加減にあんなところで修行するのをやめて、どこかに落ち着いたらいいのにとグリーンは心から思っているが、それを真剣に伝えたことはない。どこかに、なんてのも自分の隣に、だったりするがそれもまだだ。
相手は気まぐれに山を降りてグリーンに会いに来る、自分も折に触れて山に登って相手に会いに行く。今のところはまだそれでいい。
相手が本当に山籠もりを止めるときは、本人の判断だけが大事だとグリーンにはわかっていた。
何を言っても聞き入れないだろうが、冗談めいてあるいは習慣のように小言をいうならともかく、真剣にグリーンが説得したら心が揺れるかもしれない。それぐらいの影響力が自分にあることも、グリーンは自覚していた。それで思い悩むライバルなどグリーンは見たくないし、自分がいないところで頭を抱える幼なじみなど許せない。
結局山を降りてほしいと思うことも、それを告げないことも自分のエゴだ。もう少し時間がいるのだろうと思う、自分にも相手にも。
響き続ける雨音の向こう側に、リュックを背負った小さな背中が見える気がして、グリーンは足を早める。
はあ、と吐いた息は、シロガネ山のそれと違って白くはならず、透明のまま漂った。

――雪山にも、雨は降るのだろうか。


ああ雨だ、と気がついてレッドは仲間たちを洞窟に退避させた。ボールに入るかい、と聞くとしばらくはこのままでいいと言う風に揃って首を振るので、好きにさせておく。
ここシロガネ山にも雨は降る。年がら年中吹雪いているようだが、たまには雪も止むし気温が上がれば雪になりきらなかった雨も降る。それが稀なだけだ。
しかしレッドは雪よりも吹雪よりも雨が嫌いだった。濡れた体は体力を奪われるだとか雨の後の雪は筆舌に尽くしがたい寒さだとか色々あるけれど、積もっている根雪が緩むのがいただけない。
実際山ごもりしてから初めての雨の後、見回りに出たら雪崩に巻き込まれて死にかけたことがある。あの時はラプラスのなみのりならぬゆきのりで(なだれのぼりだったか?)助かったからまだ良かったものの、それ以来レッドは雨を警戒するようになった。
その代わり、雨が降るとやることがなくなる。雪やあられなら慣れっこだから気にせず特訓でもなんでもやるのだが、雨の日に外に出ているとろくなことがない。だからこうして、ねぐらにしている洞窟内で身を潜めているしかない。
仲間たちは各々遊んでいたり話していたりするようで、その声が反響して洞窟内は賑やかだ。
レッドは雨が嫌いだ。だが、雨の日はこうして時間ができて、考えごとをしたりする。
例えばどこぞのジムでリーダーなんぞをやっている、ツンツン頭の幼なじみなんかのことを。
そもそも、雨が降ったから気温が上がっていて、もうすぐ春なんだろうかなんていつもは思わない。どうせ常冬の山なのだから、下界の季節はあまり関係ない。だというのにそのサイクルを忘れないのは、そういうことに聡い男がいるからだ。
トキワで、あるいはマサラで、春一番が吹いたらやってくる。あの風ここを通過したはずだぞ、なんて言いながら。それを聞くとああ春が近いのかなんて思って、次に会いに来る前に自分から山を降りてみたりする。俺ばっかり寒い思いして会いに来るの不公平じゃねえ、って相手が以前言ったからだ。いつでも会いたいのは俺だからまあ当然だけど、なんて言われてしまっては、まるでこちらが会いたくないみたいで、隠れてる負けず嫌いに火がついた。久しぶりに山を降りて、ジムから出てくるところを待ちかまえてみたときの相手の顔はしばらく忘れられそうにない。力一杯驚いて、夢じゃないのかと頬をつねって(格好良い顔が台無しだった)それからくしゃくしゃに笑った。もしかしたら相手に会ったとき自分もこんな顔をしているんじゃないかと想像したら少し怖くなった。でも、自分がその顔を見たときに抱いた暖かいものを、相手も同じように感じていたらいいのにと思った。
花の季節になると、やれ梅が咲いた桃が咲いた桜が咲いた、ナナミ姉が育ててるバラが咲いただの言いながらその写真を持ってくる。本物持ってきたいけどこの気温じゃ枯れちまうから、お前が見に来いよなんて言って。写真にふわりと香りをしみこませてくる、そんなテクニックどこで覚えたなんて悔しいから口にしない。
夏は涼むのにちょうどいい、なんて言いながら雪山装備は万全でやってくる。ふもとじゃさぞ変な顔されただろうに、汗が冷えて寒いだろうに、そんなことは一切言わない。お前も夏の暑さを思い知るべきだと言うから、夏は自分から会いに行くことが多い。
秋は冬眠させる気かと言いたくなるぐらいの食料を抱えてやってくる。これが美味い、あれがおすすめ、こっちはポケモンたちの分、秋ぐらいは太っておけと言いながら。そんな荷物の中に、ひらりと赤くなった紅葉の葉とか紛れ込ませておくあたり、気障なところが変わっていない。流石にカタカナ語で挨拶とかしなくなったけど。
冬は冷え切る。慣れてしまったのもあるし修行のつもりでもあるから防寒着は持っていないのだけど、毎回何かしら持ち込んでくる。見てるこっちが寒い、俺がいる間だけでも着てろ、とか言いながら。本当は相手にくっついているだけで暖かいなんてことは言えない。
だけど、そういえば、雨の日に会ったことはあまりないな、とレッドは洞窟の外を見ながら思った。仲間たちはカビゴンの周りに集まって暖まりながら目を閉じかけている。自分も混ざろうかと思ったけど、スペースが足りなさそうだ。自分が寄っていけばみんながこぞって場所を譲ってくれるのはわかっていたが、それも悪い気がする。
雨の日は、どちらかというと旅に出る前か、旅がひとまずの終わりを迎えるまでに会っていた気がする。けぶる雨の中バトルをして、去っていく紫色の背中が雪山に現れた気がして、目を細めた。
ふう、と細く出た息は、少しばかり白く濁っては消えていく。

――彼の前にも、雨は降っているだろうか。

 

今日は果敢な挑戦者と戦って、かなり緊張感のある良いバトルだった。そう言って心地よく別れて、さて目的地へ向かうかと歩きだしたところに、突然の雨。
「ついてねー……」
足下でピカがふりかかる滴を不快げに払っている。見上げてくる目線に、ボールに入れようかと示したら首を振られ、レッドは首を傾げる。そんな主人のズボンの裾を引っ張って、ピカは歩くように促す。
「え? 早くしろって?」
ピッカ、と訳知り顔で頷く、腰を見たらボールの中でニョロを初めとする仲間たちまで似たような顔をしていて、肩を落とした。
「俺……そんなにわかりやすいかー?」
確かに道のりは見覚えのありすぎるものだったけど、普段よりも早起きしたりしていたけど。今更何言ってんだ、というようなポケモンたちの視線を浴びると少しばかりたじろぐ。
ばらばらと、大粒の雨は土砂降りにはならずにただ落ちてくる。しかし雨宿りをするなどという考えは最初からレッドの頭にはなくて、ポケモンたちもそれを良く承知していた。
見慣れているけれど久しぶりの風景、この道を行けば多分全てが変わらずに待っている。
いつものように修行しながら旅をして、たくさんのトレーナーに会ったしたくさんのポケモンを見てきた。それでも最初に戻ってくる場所が、もう自宅ではないことがなんとなく嬉しい。
俺のところに帰ってこい、って言ってたからなあ。
雨が降ってうんざりしていたはずの口は、いつの間にか耐えきれないように笑っていて、ピカが呆れて両前足を広げる。
傘なんて持ってない、荷物になるようなものはレッドのリュックには入らなかった。野宿の時に使う古びたマグカップとナイフ、使い慣れた毛布、一着だけの替え着。大切な図鑑はポケットに、大事な仲間たちは腰のボールに。頭には赤い帽子、心にはあの人の声を。
そうしてレッドは各地をずっと回ってきたし、これからもふらりと旅立つのだろう。そればかりは止められないのは性分だと思う。もっと強く、もっと多彩に、ただ上を目指すのは何の為なのか、レッド自身も考えたことはない。考えてどんな答えが出たところで、修行を止めることはないだろう自分を知っているからだ。
そしていつだって、帰る場所は決まっている。
どれだけ大怪我をしても、困難に巻き込まれても、絶対に帰ってくると誓ったことを思い出せば立ち上がれた。
その場所までもう少し、雨ごときに足止めされるはずなんてない。
「よっし、行くか!」
声をかけると一つ頷いて、ピカが先に走り出した。のんびりしてるなよと言わんばかりで、レッドは苦笑して走り出す。
今心の中を占める相手に、会ったときの言葉はすでに決めていた。


今日はジムが休日で、グリーンは普段手を着けない掃除などしているところだった。窓を叩く音がして、雨が降ってきたと気付く。
洗濯をしなくて正解だったと思いながら外を見ると、曇ってはいるが目の前が見えないほど降りしきっているわけではなく、雨粒が大きい分雨音もかなり大きく聞こえてくるようだった。
雨が降ると心配になる相手がグリーンにはいる。相手が傘を持つ習慣を持ち合わせていないのを知っているから余計だ。身軽であることを好み、各地を飛び回ることに全身全霊をかけるような、そんな相手に自分の想いは邪魔ではないかとたまに思う。多分相手は未だにトキワジムのジムリーダーを自分に押しつけたと少しは思っていることだろう。ジムリーダーになったのは自分が好きでやっていることだし、実際グリーンはあまりいいジムリーダーであるとは言えないだろう。理由があれば何日でも何週間でもジムを空けることすらある。それについてはカントーの他のリーダーたちも割と自由な人々なので文句は言われないのだが。
ジムリーダーはなかなかに激務だった。ジムの運営の管理、やってくるトレーナーたちの相手をして見極め、必要ならばアドバイスを送る。もちろんポケモンたちのコンディションにも常に気をつけ、また水準以上の強さを保たなければならない。協会からの無茶な要請にもどうにか応え、合間に図鑑所有者として祖父の頼みをきく。
それでも、と雨粒が当たる窓のガラスを眺めながら思う。
どんなに疲れていても、無理をしてでも、あるいはある程度仕事を放り投げてでも、あいつに呼ばれたら自分は走り出すだろう。手を差し出したり差し出されるのがちょうどいい、そんな相手がいる。
待っている、ここにいると伝えた。だからどこへ行っても構わない、帰ってこいと。
旅をする相手に着いていくことはあまりしない。用があれば時折旅路を共にすることもあるが、稀な話だ。
その言葉は嘘ではない、いつでも出迎えることができる自分でいる自信はある。だが例えば相手の身に何かあってどうしようもなく、手助けを求められたならいつでも駆けつけるだろう。
待っている、だが時には迎えに行く。
そういう自分であってもいいはずだとグリーンは思う。
雨はまだ降っている。もしかしたらこのまま止まずに本降りになるかもしれない。掃除は中断したままだが、どうせ後は床を拭くだけだ。次の休みでもいいだろう。
さて、とほうきを片づけて風呂を沸かしにいく。
実のところ確信はない行動だったが、色々と要因はある。飛び出して行ってからそろそろ三ヶ月が経つだとか、数週間前にジョウトの連中から目撃情報が入ったとか、今日がグリーンの休日であるとか。
雨が降ってもどこかで大人しく雨宿りをしているはずがない。雨の中走る相手を思い浮かべて自然と苦笑する。
傘を一本だけ持って、裏口からジムの自室を出た。
少しばかり遅かったらしい、濡れた土の道を走ってくる赤い姿を見つけて、グリーンは傘を広げた。
雨に降られた相手に、たった一つの言葉を伝えるために雨の中に歩き出す。

――二人の上に、雨は降り続く。

 

雨に最初に気がついたのは、水ポケモンのポッチャマだった。少しばかり上機嫌になったと思ったら、地面にぼつぼつと黒い跡ができる。
「雨だ、まずいな」
例によって山道を歩いていたサトシたちは、空を見上げて眉を寄せた。大粒の雨が、次から次へと落ちてくる。タケシが慌てて雨宿りできそうな場所を探す。
「ついてなーい!」
ヒカリは頭を押さえてしばらくきょろきょろしていたが、やがてはしゃぐポッチャマを抱きかかえた。
ピカチュウは雨は好きではない、サトシも雨からかばうように足下を歩いていたピカチュウを抱き上げる。
「タケシー、どっちに行ったらいい?」
「うーん……あっ、あそこに洞窟があるぞ!」
旅人に必要なのは、正確な情報と正しい準備、そして運であるという。サトシたちはそのうち二つは微妙だったが、運だけはずば抜けてあったと言える。
ぼつぼつと徐々に雨足を増す音に追い立てられるように、三人はタケシが見つけた洞窟に転がり込んだ。
洞窟というよりは岩肌に開いた穴のようなものだったが、三人と二匹が雨から逃げ込むには十分なもので三人は一息つく。
「結構降ってきたわね……」
「この空の色だと、そう長くは降らないと思うぞ、少し休憩したら行こう」
「そだなー、大丈夫か? ピカチュウ」
ぷるぷると体をふるわせて水を切るピカチュウに声をかけると、ピッカ!と頷かれた。それからしゃがんだサトシの頬に小さな手を当て、水滴を拭う。そっちは大丈夫かと言いたげな瞳に、にっこり笑ってその頭を撫でる。
「濡れるのは慣れてるからな!」
「それ自慢することじゃないわよー」
「いいの!」
どっさりと座り込んでしまう親友にピカチュウは寄り添ったが、そのサトシの目が雨を通してどこか遠くを見ているようで、チャー?と話しかける。
「ん、ああ……雨って面倒だけどさ、悪いことばっかじゃないよなー、と思って」
ピカチュウと初めて心が通ったのも、土砂降りの雨の中だった。雨の中で今はリザードンとなったヒトカゲと出会った。サトシの中で雨の日には思い出が多い。
そういえば、と束の間サトシは仲間のことも忘れて昔のことを思い出していた。あれは旅に出る少し前、幼なじみと何かにつけて張り合うようになった後のことだ。
雨の中、茂みで座り込んでいたサトシの前に相手は現れた。何をしているの、と聞かれたので、傘がない、と答えた。忘れたのかとバカにするように言われたが、家を出る頃には降っていなかったのだと反論する元気も反発する元気もなくて、ただ黙り込んだ。
嫌味な幼なじみは見下すようにため息を吐くと、腕を引っ張ってサトシを立たせた。帰ろう、と言われて首を振る。唇を噛んで頷きたくなるのを我慢した。昔の、小さく素直な自分たちならきっと並んで帰っただろうけれど、そのときのサトシには難しかった。
かたくなに俯いて拒否するサトシを、幼なじみは懇々と諭した。こんなところで雨がやむのを待っていたら帰るのがますます遅くなる、そんなことになったらハナコさんが心配するだろうし、それを放って帰ったなんてことが知られたら僕が謂われのない非難を甘んじて受けないといけないじゃないか。
母親のことを言われては弱かったし、相手が嫌味を織り交ぜながら自分のことを心配しているのもわかっていた。だから不承不承といった感じを装って、傘に入れてもらって帰ったのだった。
その日、何故か家が見えるまで離されることのなかったつないだ手の温かさが、今でもこの手に残っているような錯覚がある。
「ピカピ?」
黙り込んでしまったサトシを心配してピカチュウが覗き込む。なんでもないよと笑って見せて、少しずつ収まってきている雨をもう一度見る。
タケシの言う通り、この雨は長引くことはないだろう。あの日の雨とは違うけれど、それでも遠く離れている幼なじみを思い出した。
雨よりも晴れの方が好きだけど、雨が嫌いな訳じゃない。相手もそうだといいなと思いながら、サトシは雨の向こう側をじっと見つめる。

――お前のところにも、雨が降っていればいいのに。


おや雨だ、とフィールドワーク真っ最中だったシゲルは空を見上げた。手頃な木の一つに登って張り出した枝に腰掛けていたが、降りた方がいいかもしれない。周りの木々には雨宿りをするように鳥ポケモンや虫ポケモンたちが集ってきている、ひょっとしたらこの木にも来たくて来れないポケモンたちがいる可能性がある。
ポケモンたちの生態を調べる上で雨の日というデータも必要だから帰る気はないが、できる限り彼らの邪魔をしないことが必須だ。しかし降りようとして枝を揺らすのも刺激してしまう可能性がある、シゲルは少し悩んだ。
悩んで、結局そのままここに留まることにした。雨も少しは凌げるし、普段よりは少ないかもしれないが何匹かこの木にもポケモンがやってきたからだ。
ノートパソコンにつけたカメラをチェックしながら、自分の目でも彼らの様子を見る。
真剣にデータを取りながら、研究中にはあるまじきことだが少しばかり別のことを考える。
雨にはいくつか思い出がある。いいものから苦いものまで、そのほとんどがあの騒がしい幼なじみにまつわるものだと考えると少し頭を抱えたくなる。自分の半生はあいつしかいないのかと思うからだ。だが事実自分の記憶の大半は彼が占めていて、ついでに半生どころかこのままいけば一生分になるだろうことは目に見えている。別段それに文句があるわけではないのだが。
古い記憶なら、新しいレインコートと傘を買ってもらったのだと嬉しそうにやってきて、帰り道で盛大に転んで泥まみれになった姿だとか。流石に泣いていたが、翌日には彼の家の物干し竿にはきれいになった黄色いレインコートがかかっていた。今日も落ち込んでいたらどうしようかという自分の危惧などうっちゃって、ママが洗ってくれたと満面の笑顔ときた。なんとなく意地悪がしたくなって増水した川を見に行ったが、おっちょこちょいのくせに運動神経は抜群に良い幼なじみは落っこちたり足を滑らせたりしなかった。
旅に出る少し前は、いつからか顔を合わせる度に口喧嘩をするようになっていて、互いに素直になれていなかった。十歳で旅に出るのだと自覚して、そう簡単には顔を合わせられなくなるとわかっているのに、貴重な時間をずいぶん無駄にしたものだと今となっては思う。だがあの時期は二人ともそういうものだったのだ。なんだかんだで、あそこまで張り合っていなければ相手が今でも自分をライバルだと思っていたかどうかわからない。
その頃に、おつかいの帰りに稚拙な雨宿りをしている幼なじみと遭遇したことがある。大きな木の根本に広がっている茂みに座り込んで、雨をひたすら睨んでいた。大きい目が泣き出しそうで、黙って通り過ぎることはできなかった。結局どうにかして説得して渋る相手を連れて家まで送っていった。というよりも、ほとんど隣なのでついでに連れていったという方が正しい。引っ張った手の先でずっと不機嫌そうにしていたが、最初から間違っているのだ。そんなに不服なら、雨の中自分を見つけた瞬間にあんなに安心したように笑わないでほしい。そんな相手を放置することなんてできないことを、シゲルはよく知っていた。
全く、あのころから素直になれなくなっていた幼なじみは、今ではたまに素直になる。最新の記憶は、雨の中連れとはぐれた相手と遭遇して、何のためらいもなくこちらの傘に押し入って手をつないだときだ。内心びっくりしたが、確か昔二人で一つの傘を使ったときも手をつないだ記憶があるから、それが相手にも刷り込まれたのかもしれない。どのみち手を離す理由はなく、そのまま享受したが。
ああ、仕事にならない、とシゲルは雨の向こうのポケモンを見つめた。微かに濡れた髪の毛をかきあげる。
いつでもどこでも、折に触れて相手のことを思い出すのはいいのか悪いのか。少なくとも研究に支障を来すようではいけないとわかっているのだが。だが思い出に心を飛ばしながらも、片手ではメモを取っているあたりしっかりしている。
相手は果たして、ちらとでも自分のことを思い出しているだろうかと厄体もないことを考え、首を振って打ち消す。あのポケモン馬鹿が、まさか。
それでもシゲルは雨の向こうを見据えた。その向こうに幼なじみが見えることは決してないが、彼の大事なポケモンたちが見える。今はそれでいいのだ。
それでも少しだけ思う。遠く離れた相手にほんの少しの願いを込めて。

――君の元に雨が降ったら、僕のことを少し思い出してはくれないだろうか。


・ばか(ポケモン馬鹿と、恋人馬鹿)

初顔合わせ。
挨拶もそこそこに、研究所の庭にいたポケモンたちめがけて突進して、顔から転んで盛大に泥だらけ。
ばかだなあ、と思った。
一年後。
たまたま出先で会って、別れたと思ったら川で溺れかけたポケモンを助けて自分も流されそうになる。
ばかだなあ、ほっとけない奴、と思った。
三年後。
風で飛ばされたというシーツを追っかけて木の上、危ないから止めろって言ったのに登っていって、案の定風に煽られて落ちる。シーツと僕がクッションになって助かって、にっかりと笑った。
ばかだなあ、かわいいなあ、と思ってしまった。
五年後。
学校の奴らと折り合いが悪いらしくて、なにやら喧嘩していた。手が出そうになっていたから乱入して、強引に連れ出す。引っ張った手の先で、泣いているのがわかった。
ばかだなあ、いとしいなあ、と思った。
七年後。
何かと突っかかってくることを覚えた。僕の態度も悪いんだろうけど、しょうがない思春期ってやつだ。そのくせ簡単に僕の口車に乗って騙されるもんだから。
ばかだなあ、けどそこがかわいいなあ、と思うようになった。
現在。
たまの連絡と、久しぶりに会うことの繰り返し。君本人から、あるいは他の人の口から、聞く出来事はため息が出るものばかり。全く考えなしが。
でもばかなところがかわいくてしょうがない、僕も十分、君と同じくらいばかだ。



・ミルク

シゲルは今日も机の前で奮戦していた。どちらかというとフィールドワークを主とするシゲルだったが、こうした報告書を作成しなければならないことは当然ある。それがかなりぎりぎりの締め切りになるのも、望ましくはないがよくあることだった。
普段はあまり切羽詰まるようなことにはならないのだが、何せポケモンという生きている存在が相手なだけあって予定通りにデータを取れない場合などは多々ある。
先日データが揃ってから、シゲルは机に付きっきりだった。手書きではないが平行してデータのグラフなども作成しなければならないので時間はかかる。
今夜は徹夜だろうかと肩を回した。実際もう少し余裕はあるのだが、急いで片づけてしまいたい理由がある。
しばらくぶりに会った幼なじみの存在だ。
普段は研究で忙しい自分と、様々な地方を旅して回っている相手の都合もあってあまり会えない。たまに電話で話すことはするがやはり直接会って話せるというのは貴重な時間である。
もう少し早く終わらせておけばよかったと、突然やってきた彼の顔を見た時から巡る思考にため息をついた。当然、連絡もなくやってきた相手が悪いといえば悪いのだが、そんなことを言って機嫌を損ねてしまってもつまらない。ただでさえ、どうにも相手はシゲルの言葉を悪い方向に取りたがる傾向がある。これに関してはシゲルも自分の昔の言動が悪いと理解しているので仕方のないところだ。
できることなら時間を作りたかったが、これは仕事だ。シゲルが選んだ仕事なのだから、プライベートなことでそれに支障があってはならない。
それは相手にも昼間話し、了承を得ている。今頃はピカチュウと一緒に借りた部屋で寝ている頃だろうか。
「……シゲル? 入ってもいいか?」
考えたそばからそれか!とシゲルは叫びそうになったが口に出すような失態は犯さなかった。
「どうしたんだい? ドアを開ける前に声をかけるなんて珍しいじゃないか」
「失礼だな!」
ばたんと音を立ててドアが開き、部屋に飛び込んできたのはサトシだった。しおらしく声をかけたのは集中している最中じゃないかと珍しく気を使ったのだろう。その足下にも肩にも、普段はそばを離れないピカチュウの姿がない。
「ピカチュウは?」
「寝てたから置いてきた」
その手にはマグカップを持っていた。中身をこぼさないようにだろうか、用心しいしいシゲルの方へと歩み寄ってくる。
「……進んでんの?」
「まあまあかな、明日までには終わるだろ」
正確には終わらせる予定なのだが、そこまでは言わない。サトシは近寄ってノートパソコンの画面をのぞき込み、顔をしかめた。
「わかんない」
「そりゃ……」
君にわかるようには書いてない、と言いたげなシゲルの顔を見てサトシが口をとがらせる。
「どうせ俺はばかですよーっだ」
「別にそんなこと言ってない」
「顔が言ってた!」
そう言われてもどうしようもない、シゲルは黙って肩をすくめた。ばかだとは思っていない、知識足らずだとは思っているが。
その仕草にサトシは食ってかかりそうになったが、手に持っているものに気がついて慌ててやめる。
「邪魔しに来たんじゃないんだ」
作業を中断させてしまっていることはわかっていたのか、サトシはずいと手に持っているマグカップを差し出した。
「さ、差し入れっ」
シゲルはしばし、湯気を立てているカップを見て目をしばたたかせていた。まさかあのサトシがそんな気遣いを、という驚きと、自分の行動が気恥ずかしいのか赤く頬を染めて俯いているのがかわいいという感情と、カップの中身についての突っ込み。
しばしの逡巡の末、シゲルは突っ込みを選んだ。
「君、僕が今日徹夜するって知ってるよな」
「うん、だから疲れてると思って」
「確かにそうだけどね……サトシ、僕を寝かしつけようとしているのか?」
「なんでだよ、寝ないんだろ?」
サトシは腑に落ちないといった顔を隠さない。腹芸ができるような人物ではないことをシゲルは知っているが、それでもカップの中身には突っ込みたかった。
真っ白な液体、どう見てもホットミルクだ。
「僕の常識が正しければ、眠れないときに飲む飲み物だと思うんだけどね?」
「えっ、そうなのか!? 俺いつもココア飲んでた」
「相変わらず甘い飲み物が好きだね」
「美味いじゃん」
「って、そうじゃなくて」
脱線する会話に歯止めをかけるのはいつもシゲルの役目だった。今日もそうだ。
「だって、疲れた人にはあったかいミルクがいいって」
「聞いたのか?」
「タケシが言ってた」
そうかあの細目、と悪い感情からではないがシゲルは胸の中で思った。サトシの旅の仲間が彼に与える影響は概ね良いものだが、たまにわけのわからないことを覚えてくるのはどうにかしてほしい。だが、差し入れそのものが嬉しくなかったわけではないので、そのあたりは複雑だった。
「……いらないなら、俺が飲むけど」
「いや、いる」
例えそれが睡眠導入剤に近かろうとも、なんであれ彼からもらったものを断るはずがない。即刻受け取ろうと手を伸ばすと、訝しげに見つめられた。
「眠くならないか?」
「大丈夫だよ」
そもそもホットミルクの安眠効果は体が温まることが一番だ。ここまできたらカップの中身はほとんど冷めてしまっているだろう、問題はない。
「僕に持ってきてくれたんだろう?」
「……う、うん」
サトシは少し俯いたまま、マグカップを差し出した。よほど握りしめていたのか取っ手に体温が残っていて、指先と心がほわりと暖まる。
目の前で中身を軽く口に含む。かなりぬるめの牛乳といった味しかしない。自分が飲むのならサトシも砂糖を投入しただろうが、気遣ったのかなんなのか実に手落ちだ。だがそんなことはおくびにも出さずシゲルは片目をつぶってみせた。
「美味いよ」
「そ、そっか? がんばれよ」
へへっ、と嬉しそうに笑う、その表情を見ている方が嬉しいのだとは言わない。シゲルの言葉はどうしてもまっすぐにはサトシに伝わらないことが多いからだ。
「ほら、俺がいて邪魔だったら、もう帰るし」
「え」
シゲルは思わずサトシを凝視した。その表情を見て、サトシも小さく息を呑む。
「……帰るのか?」
存外に真剣なシゲルの言葉に、サトシは大きく手と首を振った。
「へ、部屋に戻るってことだよ! 全然、シゲルと話も、してないし……」
「そうか」
もう旅立ってしまうのかと柄にもなく焦ったが、早とちりであると悟ってシゲルは落ち着きを取り直した。それと同時に、相手も自分に会いたい、一緒にいたいという気持ちがあるのだとわかって嬉しくもなる。
「うん、だからもう寝るよ」
「そうだね、疲れてるだろうしゆっくりした方がいい」
これ以上話していると頭の中が完全に研究者モードから切り替わってしまいそうだったし、それに同意する。
だがサトシはなかなか部屋から出ていかない。どうしたんだろうと椅子に座ったまま相手を見上げると、髪に触れる手を感じた。
え、と避ける間もなく、かきあげられた前髪と、額に柔らかく触れる、ミルクよりも温かい。
すぐに離れたサトシの顔は、本当に真っ赤に染まっていた。
「は、早く終わらせろよな! ……待ってる、から」
帽子がないからか、普段つばがあるあたりに手をやって慌てて下ろす。我に返ったシゲルが手を伸ばすよりも早く、サトシは部屋から走り去っていた。
「……まいったな」
それから少し経ってから、ようやくシゲルは顔の半分を手で覆った。鏡で見るまでもない、その顔は赤く染まっているだろう。先程のサトシのように。
「反則だよ、サートシくん……」
ごまかすように昔の呼び名で呼んでみても、相手の顔が浮かんでくるだけで全く意味がない。
全く、これでは気合いを入れるしかないではないか。
「待ってろよ」
仕上げた暁には、思う存分話をしよう。好きなだけ触れ合って、少しばかり大人の真似をして。
楽しい夜明けを思い浮かべながら、まずは睡眠だなとシゲルは画面に向かい直ったのだった。

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